神の数字8

仕事終わり、愛車のインプレッサを唸らせ帰宅するかたわら、TokyoFMに耳を傾けるのが日課だ。TokyoFMは、中学時代から聴いている。平日の深夜にやる番組が大好きで、夜中ずっと聞いていたあの頃は、今となってはもう懐かしい思い出だ。

高校受験、大学受験の時期も聞いていたそのラジオは、将来のことなどどうでもよくなるくらい魅力的な情報が詰まっていて、毎日勉強をするふりをして部屋で聴いていた。

当時の番組のパーソナリティを務めていた方が今、夕方の番組を担当し、はや7年余りが経とうとしている。彼の声を聴いていたら、こんな寒い日だからこそ、自分をいじめなくてはならない。いじめられたい。という心の奥底のSとMが葛藤を始めた。

 

帰宅した私は、恒例の儀式を行い、お風呂を沸かし、最寄りの運動公園へ出かけた。

今日は、一段と冷え込むが、赤いラバーの上のランニングコースを走る人影は、いつにも増して多く感じる。

お気に入りの初音ミクの曲をウォークマンで設定し、走り出した私の今日の目標メニューは20㎞を4′30″~40″/㎞で走ることだ。

4′30″/㎞といっても普段走らない人はピンとは来ないだろう。例えるならばそれは、自転車を気持ちゆっくり漕いだくらいのスピードだ。

 

スピードには抵抗を感じない。朝飯前だ。一月に初めてフルマラソンをエントリーした。これくらいのメニューはこなさなくてはならない。

そんな気持ちで走り始めた私は、8㎞で飽きてしまい、もう辞めてしまおうかと考えた。もう今は、誰に怒られるわけでもない。汗もかいたし、帰宅しておいしいビールを飲もうと。

しかし、常に自分に課している8割の法則が発動する。

8割の法則とは、実体験より自分で考えたものである。

それは、目標に対し、8割こなすことができたら、成長できるというもの。(根拠は私だ。)

もちろん100%こなせれば文句はないが、そんないい日はなかなか無い。

7割ではだめだ。甘えの入る余地がある。

 

そんなことをグダグダと考えながら、メニューの8割である16㎞をアベレージ4′35でこなした。

 

なにが楽しくてこんなに走るんだろう。

制作活動をしている人や、絵を描くことや音楽で食べていこうとする人が身近に多くいる。

彼らに比べ、私の走るという行為は、自分のアイデンティティの一部の喪失を防ぐための活動なのかもしれない。

 

 

守りに入っている。

攻めなくては成長は見込めない。